映画:もののけ姫(病室にて)
手術の日
手術当日。
これで私の胃に棲みついた癌は、胃の2/3と周辺リンパ節、胆嚢を道連れに、きれいさっぱりなくなるはず。
再発やらなんやら心配事はまだまだあるけど、とりあえずこの手術が終われば、すこし前に進める。
放心したような気持ちで手術台に寝そべった。
手と背中に点滴の管を通され、心電図をぼんやりながめる。
ブレーカーが落ちたように、唐突に意識が飛んだ。
さよならスモーキングライフ
入院前日。
検査ラッシュのさなかは感情も忙しかったのだけど、とりあえず手術の余地はあることがわかってからは、気持ちは落ち着いていた。
明日から入院、手術だと思うと、やっとあやふやな状態から解放されるという安堵があった。
じりじり待つのはもうごめんだった。
夜中眠れなくて、なんとなくアマゾンで子供の新しいスニーカーを買ってみたりした。
本当にどうなるかはフタ(腹)を開けてみなきゃわからないけど、幸運を祈ってボストンバッグに中間管理職トネガワの新刊を入れておいた。
手術が終わって、呑気にトネガワなんぞが読めますように。
デロリアンに乗りながら
胃癌告知からの、怒涛の検査ラッシュ。
初めてのMRIは、ちょっと面白かった。
音も光もにぎやかで、なんか20年前のSF映画みたい。
音質の悪いヘッドホンからクラシックが聞こえてきたけど、いっそのことバックトゥザフューチャーのテーマでも流せばいいのにとか思ってた。うん。現実逃避です。
そして相変わらず、死への恐怖→この世への未練→投げやり の、ローテーションはまわる。
気持ちが麻痺したところをみはからって動く。
「死ぬ前にしたい10のこと」の映画のように、やっておきたいことをリストアップした。
検査結果によってはハードモード(手術の余地なし)もありうるけど、とりいそぎ、ノーマルモード(手術の余地あり)と仮定して、リストアップする。
子供への誕生日メッセージ、食事の作りおき、急ぎの仕事、必要なとこへの報告、保険手続きなどなど。
一番ハードルが高かったのが、父への報告だった。
母を癌で亡くしてるぶん癌に対する免疫はあるだろうけど、娘(私)まで癌になるなんて、心配かけるだろうなと気が重かった。
「胃癌になったのだけど、40代にしてはそんなに珍しいことでもないし、手術もできるから大丈夫だから」
と、なるべくサラッと一気に話した。
父はただ、がんばれと言ってくれた。内心動揺したと思うけど、私の前ではそれを見せなかった。
そうこうしてるうちに、検査結果が出揃った。
結果は、st1。肝臓の影はおそらく癌ではなさそうなので、手術決行。
ルーワイ法の腹腔鏡手術。胃の2/3をリンパ節も含めてごっそりもっていく。ついでに胆嚢ももっていく(石がありそうなので)。
手術までは告知の日から、ちょうど2週間後だった。
映画:死ぬまでにしたい10のこと
監督・脚本:イザベル・コヘット
製作:ペドロ・アルモドバル
cast:
サラ・ポーリー
スコット・スピードマン
デボラ・ハリー
マーク・ラファロ
アルフレッド・モリナ
あらすじ:
23才のアンは働きながら、夫と2人の娘とトレーラーハウスで暮らしていた。貧しくも幸せな暮らしの中、癌が発覚。突然、余命2ヶ月を宣告される。
手のほどこしようのない病状を受け入れたアンは、病気のことを誰にも打ち明けず、「死ぬ前にしたい10のこと」を一つずつ叶えようとしていく。
ペドロアルモドバル大好きです…!!
「神経衰弱ぎりぎりの女たち」が一番好きだけど、一番衝撃受けたのは「トークトゥーハー」です。
で、これ。「死ぬ前にしたい10のこと」。
製作にアルモドバルが関わってるそうな。
さすがスペイン映画というか、まー女性が生き強いことといったら。
どうせ死ぬならセックスしたい。旦那以外男知らないし。
あと、子供に新しいママを見つけよう。その子はいきなり2児の母になるけど別にいいよね。
て、お前…。
まあアンちゃんの胸中を想像したら計り知れないものがあるけど、
映画自体はドライでファンタジックで、お伽話な雰囲気が良かったです。